院長からのご挨拶

茨城県立医療大学付属病院 院長 河野 了
皆さまへ
このたびは、茨城県立医療大学付属病院のホームページをご訪問いただき、
誠にありがとうございます。
当院は、1996年の開設以来、リハビリテーション医療を専門とし、
患者さん一人ひとりが自らの人生を取り戻すための支援を続けてまいりました。
急速に進化する医療技術、複雑化する社会課題のなかで、
私たちは未来志向の医療へ果敢に挑戦し続けています。
その道のりにおいて、私たちが大切にしているのは、患者さんとご家族と共に歩む医療です。
医療とは、単なる「治す行為」ではなく、その人らしい生き方をともに考え、支え、創り上げる営みだと信じています。
アメリカン・リアリズムの代表的画家であるアンドリュー・ワイエスは、
彼の別荘の隣人であるクリスティーナ・オルソンをモデルに名作「クリスティーナの世界」を描きました。
その絵の中で、たったひとりで広大な草原を這い進むクリスティーナは、幼少期にポリオ(小児麻痺)を患い、
下半身に重い障害を負いながらも、家族の農場で独立心を失わず生き抜いた女性です。
彼女は歩くことを許されなかった身体で、遠くに見える家を目指して這って進み続けます。
ワイエスは、草原を這ってでも自宅へ向かう彼女の強靭な精神に心を打たれ、その姿をキャンパスに残しました。
広大な草原に横たわる彼女の背中は、一見すると弱々しくも見えます。
しかし、その背中に込められたのは、どんな困難にも屈せず自らの力で未来へ進もうとする、静かで揺るぎない意志でした。
彼女にとって「世界」とは、諦めることでも、立ち止まることでもありません。
たとえ自由に歩けなくても、意志と希望の力によって、自らの世界を切り拓いていったのです。
私たちは、クリスティーナの姿に、リハビリテーションに臨むすべての患者さんの想いを重ねます。
障害をかかえるすべての患者さんが自らの意志で歩もうとする一歩を、私たちは最大限に尊重し、支えたいと考えています。
これからも当院は、最新の医療技術などを活用しながら、一人ひとりの想いに寄り添う
「人間中心の医療」を追求してまいります。また、地域の医療機関・福祉機関・行政と力を合わせ、
誰もが自分らしく生きられる社会の実現に貢献してまいります。
当院は、茨城県立医療大学との連携をさらに深め、未来を担う医療人材の育成にも努め、
患者さん、ご家族、地域社会と共に新しい医療の地平を切り拓く存在であり続けたいと考えています。
「すべては患者さんとそのご家族のために」──この揺るぎない理念を胸に、
私たちはこれからも、未来へ向かって歩み続けます。
皆さまの温かいご支援を、心よりお願い申し上げます。
